クロスボーダー・アフリカ 大陸横断取材の旅へ

この夏、アフリカ大陸を西から東へ、陸路で横断する旅に出ます。乗り合いバスで赤土の道を揺られ、森を抜け、川を渡り、国境を越える。紛争、格差、感染症――命がけで国境を越える人たちが直面する現実と、起業、教育、デジタル化など未来への希望の芽を探しに行きます。まずは6月3日夜、出発地セネガル・ダカールからの出演・ライブ配信でお会いしましょう!
村山祐介 2026.06.01
誰でも

最源流の大陸に向かう

 「なぜ人は、命がけで国境を越えるのか」

 この10年追い続けてきた問いです。

 アメリカ大陸では、移民たちが越えるダリエンギャップの密林を歩き、ヨーロッパ大陸では、地中海や大西洋を渡る難民たちを追いました。

 そしてこの夏、人の流れの「最源流」の一つであるアフリカ大陸へ向かいます。

 2024年6月、チュニジア沖で沿岸警備隊の監視船に乗った夜のことです。

 真っ暗な海にライトが当たると、粗末な鉄板ボートが浮かび上がりました。イタリアを目指す密航船に40人以上がすし詰めになり、赤ちゃんの姿もありました。

 「どこから来たのですか?」

 返ってきたのは、ブルキナファソ、ギニア、コートジボワール、ギニアビサウ、ガンビア、カメルーン、ナイジェリア……。

 青年が言いました。

 「つまり、アフリカ中だよ」「アフリカ連合さ」

 話を聞くと、誰もが、それぞれの事情を抱えていました。この場面が頭から離れません。

 でもめずらしいことではありません。地中海でも、大西洋でも、南米の密林でも、ポーランドの森でも。命がけで国境を越える人々の中には、いつもサブサハラ(サハラ砂漠以南)の人たちがいました。

 2019年冬、南米コロンビアで危険な密林ダリエンギャップに向かうボートの上には、カメルーンの人たちの姿がありました。武力衝突で故郷を追われ、「俺たちはもう、引き返せないんだ」と語っていました。

 22年冬、地中海のリビア沖で国際NGO「国境なき医師団」の捜索救助船に1カ月間同乗取材したときには、スーダンやギニア、コートジボアールなど16カ国439人が救助されました。バングラデシュやパキスタンといった南アジアの人たちもいました。

 23年夏、毎年1千人以上が命を落とす地中海中央ルートの玄関口の一つ、イタリアのランペドゥーサ島で取材していると、若いギニア人女性の水死体が運び込まれました。その船の出発地、チュニジア中部スファックスでの冒頭の取材の翌朝、洋上を漂う赤ちゃんの遺体を目にしました。

 25年夏には、西アフリカからスペインを目指す「大西洋ルート」をたどりました。

 目的地にあたるスペイン南部にある、「ビニールの海」と呼ばれる巨大温室地帯。そこでは、海を越えたサブサハラ出身の移民労働者たちが炎天下の下で働いていました。

 密航船の出発地の一つ、セネガルの漁村では、地元船を装った大型漁船に魚を奪われ、集団密航に追い込まれていく漁師たちの姿がありました。遭難から奇跡的に生還した若い地元漁師は、それでも「支えも希望も仕事もない。密航が頭をよぎります」と漏らしました。

 「ここにいても、生きていけない」。そんな現実が、危険な旅へ駆り立てていました。

大陸西端ダカールから陸路で東へ

 今回の旅の出発点は、西アフリカ・セネガルの首都ダカール。その西端、アルマディ岬から6月3日に出発します。できる限り陸路か海路で、地図の上に一本の線を刻むように進んでいきたいと思っています。

 本来なら、サハラ砂漠を突っ切るのが最短ルートです。でも現在の砂漠南縁のサヘル地域は、軍事クーデターが相次ぎ、「クーデターベルト」と呼ばれる政情不安な一帯になっています。旧宗主国フランスと絶縁して、ロシアとの関係を深める軍事政権も多く、外国人ジャーナリストが自由に入れる状況ではありません。

 そのため、まず南から迂回するルートをたどります。

 セネガルからギニア、シエラレオネ、リベリアへ。そしてコートジボワール、ガーナへ――。約2カ月間、西アフリカを横断する予定です。その後はいったんドバイに戻り、秋ごろに再開できればと考えています。四国遍路でいう「区切り打ち」のような旅です。

 安全とは言えない地域もあります。武装勢力、テロ、感染症、洪水。陸路を断念して、空路で行く場面もあると思います。

 なぜ、通れないのか。

 そのこと自体が、アフリカの現実の一端を映すことになるのかもしれません。

苦難と希望、その両方を追う

 道中では、各地の社会課題の現場を訪ねます。

 紛争、環境破壊、貧困と格差、若年妊娠、干ばつ、感染症――。人々が将来を悲観し、故郷を離れる理由と向き合う一方で、デジタル化、起業、教育、植林、難民との共生など、「国境を越えなくても生きていける未来」の芽も探したいと思っています。自立を後押しする日本の市民社会の取り組みも取材します。

 最初に旅する西アフリカは、私にとってアフリカの旅の原点でもあります。

 大学生のころ、パリ・ダカールラリーで見た広大な砂漠に憧れ、ガンビアからセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソを旅しました。10年前には、エボラ出血熱後の検証取材でギニア、シエラレオネ、リベリアを回りました。

 大学時代の旅から30年余。そしてジャーナリストとしての前回の取材から10年。いま何が起きているのか見てきたいと思っています。

旅の様子をリアルタイムで

 今回、発信の形もいろいろ試してみたいと思っています。

 TBSラジオ『荻上チキ・Session』で毎週水曜日午後6時45分から、「クロスボーダー・アフリカ 村山祐介の音でたどる大陸横断ルポ」と題して10分間、現地から生出演します。

 それに続いて午後7時からは、YouTubeチャンネル「クロスボーダーリポート」でライブ配信もする予定です。

 このtheLetterを通じて旅のブログを、そしてXフェイスブックでも、旅のスナップショットを発信していきたいと思っています。一部は朝日新聞with Planetで記事を配信します。

 通信事情でつながらない日もあるかもしれません。それもまた、旅のリアルです。

ゴールは、まだ決めていません

 地図上の大陸最東端は、ソマリア東部プントランドのハフン岬です。しかし、過激派組織の活動地域に近く、安全確保がとても難しい場所です。

 無理はしません。

 旅を続けながら、「どこに行くのか」を、みなさんと一緒に考えていけたらと思っています。

 それでは、現場へ行ってきます。

――いや今回は、「一緒に」現場へ行きましょう!

 まずは6月3日水曜日、午後6時45分からTBSラジオ『荻上チキ・Session』、午後7時からのYoutubeライブ配信でお会いしましょう。

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