「死の通り」によみがえった恐怖――復興したブチャに迫る自爆型ドローン

「だってママが完成させたくないんじゃん」。路上に遺体が転がり、「死の通り」と呼ばれたウクライナ北部ブチャ。ロシア軍撤退から4年。町並みは復興したものの、完成間近の新居を前に立ち止まる家族もいます。自爆型ドローンの脅威にさらされるブチャを再訪しました。
村山祐介 2026.05.30
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 侵攻開始直後から約1カ月にわたってロシア軍に占拠され、撤退後には多数の遺体が残されていたブチャ。100以上の遺体が埋まっていた集団墓地も見つかり、世界に衝撃を与えた町だ。その後、私が訪ねるたびに町並みから戦争の痕跡は薄れていった。2年ぶりで12回目となる今年2月、町の現在地を確かめるため再訪した。

 ブチャを象徴するのが、「リンゴの木」を意味するヤブロンスカ通りだ。当時、路上に遺体が点々と転がり、住民に「死の通り」と呼ばれていた。私が22年4月に初めて入った時も、路上には黒焦げの車両が放置され、その中には燃え焦げた遺体が残されていた。近くの雑木林には、頭蓋骨と頭部を失った胴体があった。

「死の通り」によみがえった恐怖

 私はこの通りに面したモスティパカ家を2年ぶりに訪ねた。集団墓地をつくった市サービス公社の男性を取材した縁で、ブチャに行くたびに伺っていた。

 侵攻以来初めて対面で学校が再開した22年9月1日には、私は当時9歳だった次男イゴールの登校に同行した。久しぶりに友達に会えてスキップしながら登校したものの、帰宅後は浮かない顔で、「戦争が冬までに終わらなかったら、どう生きていけばいいのかわかんないよ」と全壊した家の跡地に寝転んでしまっていた。

 今回訪ねると、コンクリートの土台だった場所に新しい家がほぼ完成していた。あとは内装の仕上げをするだけだという。母アンナ(42)に続いて顔を見せたイゴール(13)はすっかり少年の顔つきになっていた。

2026年2月15日、ウクライナ北部ブチャ

2026年2月15日、ウクライナ北部ブチャ

 「イゴール! ずいぶん背が伸びたね。新居もできてなによりだよ」

 そう声をかけると、アンナの顔からさっと笑みが消えた。

 「まだ完成はしていないんですけどね」

 イゴールが口を挟んだ。「だってママが完成させたくないんじゃん」

 アンナはためらいながら打ち明けた。

「あまり楽しい思いをしていないんです・・・『シャヘド』が飛来していますから」

 昨年11月29日午前7時前のことだった。すぐ隣の家の敷地に、シャヘドが着弾した。ロシア軍が大量投入しているイラン設計の自爆型ドローンだ。

 スマホの映像をみせてもらうと、空を巨大な火球が染め上げる様子が映っていた。そのとき、家には長男(16)と義母(65)がいたという。アンナは「フェンスの奥に着弾しました。20メートルくらい先です」とイゴールの部屋から窓の外を指差した。

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  • 「正義」なき和平
  • 「領土より命」
  • 記憶を残す橋

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